【街道探訪】御坂みち

富士山を観賞するのであればどこが適地であるか。
わたしは数ある中の冨士の壮観で、ある峠の旧道からみる景色を紹介したい。

峠に茶屋を据え、古拙に富む隧道が口をあけ、眼前に大小四囲に調和した富士が"描かれている"。

この景勝地は、現在旧道の峠に位置し、正確な位置は異なると思われるが江戸時代より歌川広重などに取り上げられ、歴史は古い。
御坂みちという。

古くは、鎌倉時代に遡り、御恩奉公でその政治制度を維持していた「いざ鎌倉」の道路として御坂みちが登場する。

山紫水明。
山、湖、平原、空、自然の成り立ちを全て包含している景色が隧道を抜けると寸も待たずに満目展開する。
川端康成の雪国の冒頭にあるような表現がそのまま適用できそうな、トンネルを抜けると壮大な富士の景色が広がるのである。

人口物としても絶妙な位置に茶屋があり、これまで峠を越えた人間の心に映し出されたこの景色は生涯忘れることのないものとなってきたであろう。

富士を観賞する歴史。
御坂みちは、古来よりその自然美に対する人の共通した感性を感じることができる場所なのかもしれない。

旧国道137号御坂峠から見る新緑と冨士(5月)

旧国道137号御坂峠から見る蕭条山風と冨士(2月)

御坂峠に存する峠の茶屋

 

高度成長期ごろの御坂みち。舗装はされておらず砂利道であった。


道路情報

アクセス:山梨県道708号線
注意点:冬季は路面が凍結するため通行に注意してください。
走行快適度:一般的な都市道路と変わらない
酷道レベル:該当せず